悲しき社畜が経済的自由を目指すブログ

これは、悲しき社畜が経済的自由を目指す物語である。

『ROE革命の財務戦略』を読んで

 

ROEやPBR,ROE等の財務指標の扱い方や、伊藤レポートによって提唱されたROE利回り8%の理由、企業経営における資本コストを意識することの重要さ等について実例を交えて、わかりやすく説明している。

ROE革命の財務戦略

ROE革命の財務戦略

 

 

 

伊藤レポートとは

正式には「「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~」」のことであり、以下の抜粋では、資本効率とその代理指標であるROEの重要性を強調している。

資本主義の根幹を成す株式会社が継続的に事業活動を行い、企業価値を生み出すための大原則は、中期的に資本コストを上回るROE を上げ続けることである。なぜなら、それが企業価値の持続的成長につながるからである。この大原則を死守できなければ資本市場から淘汰されるだろう。資本主義の要諦は労働分配率にも配慮しながら、資本効率を最大限に高めることである。個々の企業の資本コストの水準は異なるが、グローバルな投資家から認められるにはまずは第一ステップとして、最低限8%を上回るROE を達成することに各企業はコミットすべきである。もちろん、それはあくまでも「最低限」であり、8%を上回ったら、また上回っている企業は、より高い水準を目指すべきである。

 

ROEとは

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ROE(Retuin On Equity)とは、株主資本利益率のことである。株式投資家から見ると、企業がどのような資産に投資をしようが結局どの程度のリターンを株主の利益として生み出しているかという点でわかりやすい。株式投資家の立場からは、長期の投資リターンは、長期のROEに収斂すること、および上場企業が開示を義務付けられており、異業種比較が行いやすい指標でもあることから、一般に「資本効率」というと、代表的にROEが使われることが多い。

 

日本企業のROEが低い理由

ROEはデュポン式を用いると、収益性(純利益/売上高)、資産効率性(売上高/総資産)財務レバレッジ(総資産/自己資本)の3つに分解できる。

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それぞれを国際比較すると、財務レバレッジと総資産回転率は遜色ないものの、収益性が米英等のトップグループの企業と比較して半分以下であり、稼ぐ力の低さ(=低利益率)がROEの低さに繋がっている。

 

なぜROEを重視するのか

株主の利益はキャピタルゲインインカムゲインの合計であり、株主が利益を上げるためには、株価の上昇分と配当金の受領分の合計を考える必要がある。これをTSR(Total Stakeholder Return)といいROEと同様、年率(%)で表す。短期的にはノイズがあり、株価は間違うものであるが、長期的にはTSRROEに収斂する。ROE株主資本利益率であり、企業が株主から預かった資本を事業に投資して、どれだけの年率リターンをあげているかを示しているので、当然ROEは、長期的な株主の利益率と近似値になる傾向があるからである。外国人投資家は、この事実を織り込んで、株主利益と関連性が強いROEを最重視する。なぜROE8%が求められているのかという点については、グローバルな機関投資家が日本企業に期待する資本コストは平均して7%超であり、ROEが8%を超える水準であれば、約9割のグローバル投資化が想定する資本コストを上回ることになるため。

 

エクイティスプレッドとは

エクイティスプレッド(%)=ROE-株主資本コスト(%)

株主資本利益率から株主資本コストを引いたもの。価値創造の指標。プラスであれば、企業価値を増加させていると見なされ、逆にこの値がマイナスであれば、調達した資金を増やすことができず投資家の期待を満たしていない企業であると判断される。前述の通り、外国人投資家の9割が期待する資本コストは約8%であるが、実際に「ROE-8%」でマイナスの値となる企業の大半はPBRが1を切っている。これは株価が簿価を下回っているため、市場がその企業を「解散したほうがまし」と判断していると捉えられる。企業は、このエクイティスプレッドを開示し、企業価値の増減を意識した経営をするべきである。

 

まとめ

経営者は利益の絶対額ではなく、資本利回りの重視が必要。国際的な競争力を持つ収益性を身につけるべき。経営者はROE、エクイティスプレッドを踏まえ、企業価値の向上に努めることが肝要。