企業分析:イーレックス(9517)
久しぶりに株関連の記事を書いてみます。
企業分析となるのですが、基礎情報はGMOクリック証券から活用させていただきます。
これは、すぽさんという個人投資家の方がブログで企業分析の際に活用しているものですが、便利でしたので私も使わせて頂いております。では早速分析してみましょう。
↑すぽさんもイーレックスについて分析されてますので、併せてご確認ください。
ウチの会社 電気売るんだってよ 電力小売ビジネスを始めるための10のポイント
- 作者: 関電システムソリューションズ?ビジネスコンサルティング部
- 出版社/メーカー: 日本電気協会新聞部
- 発売日: 2016/01/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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1.基礎情報
企業概要
発電から小売まで垂直展開を行う電力会社。パーム油を燃種に使う「バイオマス発電」を主力に競争優位の高い事業展開。顧客層は、小口・低圧需要家など、小規模顧客を対象としている。
財務情報
ストックベースでは、借り入れを伸ばして企業規模を急拡大している様子が見てとれます。借方を見てみますと、現金と有形固定資産が大きく伸びており、有形固定資産は事業の根幹をなす、発電所の建設によるものと推察されます。借り入れが大きくなっているのも、発電所建設に伴うものではないでしょうか。ともあれ、成長し続けている企業であることがわかります。
フローベースでみても、売上高、営業利益、純利益ともに成長し続けています。2018年時点での売上高は311億円、35億円。電気事業は売り上げに占める原価比率が高いため、営業利益率は10%程度と低めとなっています。とはいえ、当期のROEは14%と自己資本が低いこともあり、高い数字になっています。
2.戦略と目標
競争戦略
①バイオマス発電を中心に競争優位性のある電源による事業展開。
②大口・高圧需要家よりもマージンの大きい小口・低圧需要への販売が中心。
③少数精鋭体制、営業活動は代理店を活用。機動力に強み。
主な経営目標
http://www.erex.co.jp/ir/plan.html
→
売上高:中期的には2017年の売上高から3倍強となる目標。
収益:現行で既に達成しており、継続して観察する。
資本効率:現在よりも更なる効率化が求められる。
3.強みについて
競争力のあるバイオマス発電の展開
バイオマス発電とは、植物由来の油や木材などを活用した発電方法をさします。イーレックスはPKS(パーム椰子の殻)によるバイオマス発電が主となります。
http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/renewable/biomass/index.html
また、電源特性として、バイオマス発電は安定した出力のベースロード電源です。太陽光や風力という天候に左右される変動電源とは違い、インバランスコストが低いことも強み。基本的に燃種が異なるだけで原理は火力発電所と同一です。俗にいう「再生可能エネルギー」としては、最も使い勝手がいい融通が利く電源となります。
また、FITによるコスト競争力強化も大きな要因です。決まった期間の間に決まった価格で交付金がもらえる制度のおかげで、事業性の確保、採算性の向上が見込めます。そういう意味では、ローリスクで儲けができているといえます。逆に言えば、固定価格終了後のリスクもあります。
利益率の高いレイヤーに資源集中
独立系であるポジショニングを活用し、利幅の高い顧客を重点的に攻めている。具体的には小口、低圧需要家といった層である。大口の顧客は、規模が大きいため競合が多く、過度な価格競争に陥るリスクがある。一方で小口や低圧需要家は、価格感応度が低く電源規模が小さくても供給が可能であり、継続した利益が見込みえる顧客層である。
脱炭素化というメガトレンド
脱炭素化が世界規模で進んでおり、非化石資源の環境価値が高まっている。制度的に非化石資源を用いている事業者を優遇といったさらなる強みとなる可能性がある。
4.懸念事項について
エネルギー市場の構造転換
世界規模で、脱炭素化の趨勢にありポジティブなニュースではあるが、制度的なリスクが多い業種であるため、業績未達のリスクは一定程度存在する。
回避可能費用単価の変更について
回避可能費用とは、買い取った再生可能エネルギーを活用することにより、回避できた費用のことです。再生可能エネルギーを買い取った企業は、この費用を差し引いたお金を国からもらうことができます。つまり、自社で再エネの発電所を作れば、コスト競争力の高い電源を手に入れることが可能なのです。
これまでは、激変緩和措置により回避可能費用が固定化されているため、利ザヤが簡単に取れる状況が続いていましたが、措置の終了により回避可能費用が市場連動となり、市場のゆがみが是正される見込みとなっています。2020年以降は今より収益化が難しくなることは必至と思われます。
市場規模について
人口減少や省エネにより日本という市場規模は縮小傾向にある。イーレックス程度の企業規模であれば懸念する心配は少ないが、マーケット自体はこれ以上広がらないという認識は重要。しかしながら電化率の向上は見込めるため、市場規模は緩やかな減少で縮小すると思われる。
燃料価格の変動リスクについて
脱炭素化の趨勢の中、バイオマス発電普及により燃料価格高騰のリスクがある。イーレックスはPKSを燃料としているが、近年バイオマス発電の普及により価格が上昇傾向にある。現時点では、外部に販売するほど供給力はあるが、今後の燃料価格の推移を注視する必要がある。主な輸入先はインドネシアやマレーシアといった東南アジアであり、貿易的なリスクもあることを認識しておきたい。
5.株価について
(2018/6/11時点)
株価:1,160円
予想PER(2019.3):14.4
EPS:38.4
予想EPS(2019.3):73.2
売上高は中期経営計画によると3~4年後には1,000億円となる見込みであり、現在より3倍強となります。
株価=PER*EPSとなりますが、経営目標の数値を織り込んだEPSは、38.4*3=115.2円ほどになるので、これをもとに理論株価を計算すると以下の数値になります。
理論株価=14.4*115.2=1658.88円
現在の株価を見ると、まだまだEPSの上昇余地はあり、環境価値の導入や再エネの認知拡大によるPERの切り上げも見込めます。エネルギー産業は政策リスクがあり不確定要素は大きいものの、非化石資源の価値評価は不可避的であり、それらのプレミアムも株価に寄与するのではないでしょうか。
6.まとめ
ビジネスモデルとしては、いかに安く仕入れていかに高く売るかという特段新しいとは言えないものではあるが、「仕入」の部分においてはFITという制度の活用や少数精鋭によるコスト削減、「収益」の部分では、販売代理店を活用しての広範囲の営業活動、価格競争の生じづらいポジショニングを貫くなど、大手と直接競合を避けるいわゆるニッチ戦略が機能している。
根幹となるのは、FITをはじめとする制度面であり、やはりエネルギー事業は制度的リスクが大きい業種と言える。とはいえ、世界的な脱炭素化の流れを見るに、環境価値という面においても企業価値の向上は見込める。市場規模としてみると、全体の市場規模は人口減少や省エネにより縮小傾向ではあるものの、新電力のシェアは10%程度であり、開拓余地はまだ大きいと考えられる。
総合的には、現在の株価は割安だと判断する。ただし、エネルギー業界の構造転換の最中であり、制度要因による業績変動に注視する必要がある。
以上、ご意見があればお気軽に書き込んでください。