悲しき社畜が経済的自由を目指すブログ

これは、悲しき社畜が経済的自由を目指す物語である。

『テクノロジー思考』を読んで

テクノロジー思考 技術の価値を理解するための「現代の教養」

テクノロジー思考 技術の価値を理解するための「現代の教養」

面白い本を読みましたのでシェアします。

インターネットは成長産業ではない

iPhoneすなわちスマートフォンが世にデビューしたのは2007年。以来、十余年が過ぎ、2017年にスマートフォンの世界出荷数の伸びは止まった。自動車や洗濯機、冷蔵庫、電子レンジですら年数%伸びているのに、である。

 

これと同時にインターネット利用者人口も2桁成長を割り込み、低成長時代へと突入した。

 

日本の総務省発表によるインターネット普及率は、2013年に80%を超えて以来5年以上年1%も増えておらずフラット化している。その一方で総人口は一貫して減少し続けているのだから、2017年に日本のインターネット利用者数はとうとう減少に転じた。

 

インターネットの外のレースが始まっている

インターネット産業が成熟してしまった今日において、引き続き世界に星の数ほどあるスタートアップ はどこに向かっているのか。答えは簡単、「インターネットの外」である。

 

医療、交通、物流、教育、製造など、リアルでフィジカルな世界をテクノロジーで再定義する競争が既に始まっている。一般にデジタルトランスフォーメーションと言われているのも、これと同義と考えて差し支えない。

物流革命 フィジカルインターネット:日経ビジネス電子版

↑この記事も当該内容と同じような感じです。

 

インターネットの中でも最もトランスフォーメーションされた産業は広告産業である。加えて広告収入の「撒き餌」であるところのコンテンツ産業であった。

 

広告とコンテンツの事業構成要素はほぼ100%データである。故にインターネットの登場以来、四半世紀で最もデジタルトランスフォーメーションが進んだ。

 

20191月時点での米国スタートアップ 時価総額ランキング上位からUber(交通)、WeWork(オフィス)、Airbnb(宿泊)のトップ3全てが「インターネットの外」が主戦場のビジネスを展開している。

 

インターネットの外の産業は、デジタルで完結するインターネット産業と異なり、まるでシリアスであり収穫逓増期までに時間がかかる。タックルせんとする産業の構造、実情を深く理解していなければならない。

 

インターネットによってデジタルトランスフォーメーションされた最大の産業は、広告とコンテンツ産業だった。また、金融はそれ以前からデジタル化オンライン化が着実に進んできた。

 

ではその次、インターネットの外のレースが開幕した今、それが最も激しく起きている激震地産業はどこか。

 

答えはモビリティとヘルスケアである。元来GDP構成比も大きく、人間にとって必要性、喫緊性が高い2大産業が、デジタルトランスフォーメーション全盛の今、最も世界中から資金が注がれている分野である。

 

なぜ現代は、イノベーション至上主義の時代なのか

イノベーション現代社会における金科玉条である。これに取り組まないものは無能、または悪である。好むと好まざるに関わらず、これが世界の常識になった時代に我々は生きている。

 

人類のイノベーションの需要が高まると何が起こるか。その値段が上がる、というのが正解である。イノベーションはインフレしている。これからもどんどんインフレする。ユニコーン、すなわち時価総額10億ドル以上の未上場企業をそう呼んでブーム化している理由もそこにある。

 

イノベーションを実現するのに最も適した組織体がスタートアップである。ゆえに皆がスタートアップを追い求め、その値段が上がる。

 

イノベーション至上主義とインフレは、一方であるものをデフレさせている。失敗である。失敗のデフレ、あるいは失敗のコストの極小化と言ってもいい。その背景にはスタートアップ自体のコストの劇的な低下がある。サーバ代や開発期間が劇的に小さくなっている。90年代はそれらに億単位の金がかかったが、今やクラウドサーバやノンエンジニアの素人でもサービスが作れる。そららをつかってコストゼロからスタートして事業のスケールにある応じて漸増すればよい。

 

ここから得られる教訓は、イノベーションに取り組むものは失敗を量産すべきである、という命題である。失敗のコストが極小化しているということは、それを回避することによって生じる機会損失の方が相対的に大きくなったということと同義だからである。成功を追い求める者であるならば、失敗を避けるということはそもそも合理的な選択行動ではない。失敗のコストはありがたいことに極小化したのである。

 

過剰流動性イノベーション至上主義のマリアージュ

世の中に金が増えて、市場参加者が増えると、当たり前だが投資の収益性は下がる。すると期待収益が高いアセットクラスから、低い方へと水のように降りてくる。それがスタートアップの株式というアセットクラスの値段を釣り上げ、ユニコーンと呼ばれる時価総額1ビリオン米ドル以上の企業を世界中に数百社も生んだ理由である。

 

それを証明するかのごとく昨今のマーケットで同時に起きている減少がある「バリュー投資の死」と言われる減少である。普通の投資をディシプリンを効かせてやっていれば儲かった、という時代は残念ながら終わってしまったのである。

 

マネタリーベースを見ると、リーマンショック直後から2018年を比較すると4倍に跳ね上がっている。流動性、すなわち金の量に呼応して上がっているものは、あらゆる資産の価格である。

 

現代において株式市場が最も影響を受ける要因は実体経済とともに、金融政策すなわち金利やマネタリーベースである。世界はリーマンショック以降、異次元の金融政策を実施、大量の紙幣発行によって経済を支えてきた。これが、株式市場がその後現在までにおいて好調である大きな要因のひとつなのだが、同時にまたスタートアップ、ひいてはイノベーションのインフレの理由をマクロの過剰流動性に見出すことが論理的にだと言える証左である。

 

トップライン重視でボトムライン軽視、規模重視で効率軽視

過剰流動性イノベーション至上主義のカップリングにより、スタートアップ経営における新たなルールが形成された。第一のルールは、売上の重視、収益の軽視である。

 

イノベーション至上主義のスタートアップ投資価値基準は、グロース投資の次元を遥かに超えた、いわばハイパーグロース投資である。つまりは、利益ではなく売上、あるいは売上すらも通り越して、流通総額やユーザ数といった経営指標をその算定根拠とする。

 

第二のルールが規模重視で、効率軽視だ。イノベーションの青田買いが進むと、その産業におけるポール・ポジションという地位の希少価値が高まる。故にその奪取競争が早期化する。そのためには金に糸目はつけない。なぜなら金は過剰流動性によってそもそもコモディティ化しているからである。よって、使いさえすればポール・ポジションを取れると見るや、尋常ではない規模の資金が集まるし、その資金が尋常ではない使われ方をすることが投資家に許容される。

 

まだ続きます。