悲しき社畜が経済的自由を目指すブログ

これは、悲しき社畜が経済的自由を目指す物語である。

地域通貨についての考え方

近年、ブロックチェーン技術の登場により分散型社会へのトレンドとなっており、出ては消えた地域通貨も流行りが見えます。

 

地域通貨で実現する地方創生

地域通貨で実現する地方創生

 

地域創生、地産地消の観点から、地域通貨のコンセプトは、富が域外に流出しないという点において望まれているものなのは間違いありません。しかし、望まれていながら何故今まで普及していないのかというところを考察してみようかと思います。

 

結論から言うと、通貨のシェアはネットワークエフェクトに因るものであり、還元率の高い大資本のペイメントサービスの方が普及していくでしょう。また、今後はリブラ的なグローバル通貨が登場することで、各国の通貨が相対的に「地域通貨」となり、価値が減衰していくのだろうと思っています。

 

まず、通常の通過(法定通貨)の機能は何でしょうか。一般的には、価値尺度・交換手段・貯蔵手段の3つとされています。

 

価値尺度については、通貨により価値が定量化できれば、あらゆる物やサービスの価値についての物差しとなります。交換手段については、定量化することにより異なるモノの交換がスムーズになります。貯蔵手段については、モノは時の経過により腐敗、朽ちるものですが通貨は腐らずに貯蔵可能です(物価変動により増減はしますが)。

 

一般的に考えられるこれらの機能において、地域通貨が優れた価値を出すことができれば普及しているはずですが、現状そうなってはいません。何が原因なのでしょう。それぞれの機能ごとに考えます。

 

価値尺度⇒ほぼ全ての地域通貨は、尺度が法定通貨にペッグされており、日本円の価値と等価です(日本円と異なる単位である時点で、利便性は低下します)。尺度として、法定通貨に勝る要素はありません。

 

交換手段⇒地域内では不便がないかもしれませんが、地域通貨はその名のごとく、域外で使えません。流動性の低さという観点から地域通貨法定通貨と比較してディスカウントされます。この流動性というネックをカバーしうるほど圧倒的なメリットが無い限りは、使う誘因は少ないと思われます。

 

価値貯蔵⇒この点にも法定通貨の圧倒的な強さがあります。通常、法定通貨普通預金に入れてさえいれば、最低1,000万円までは法律で保護されます。一方で、地域通貨は主体がどうあれ、法的な保護がありません。法的な枠組みでもない限り、いつ無くなるかわからない地域通貨で資産を保管しておく理由はありません。貯蔵の観点から、法定通貨を上回る価値を出すのは難しいでしょう。

 

以上を踏まえると、価値尺度・価値貯蔵の点では訴求ポイントを見出すことは難しく、交換手段の部分で如何に優位点を作っていくかが論点となるでしょう。

 

地域通貨について、あまりポジティブな話をしてこなかったのですが、一方で話題を呼んでいる地域通貨は幾つか存在します。飛騨信用組合の「さるぼぼコイン」や鹿児島銀行の「Payどん」が代表的なものです。

 

まず前者については、今年の11月時点でユーザは約1万人。ボリュームゾーンは、50-70代の女性という。1%の還元率が、中高年女性にウケているようです。コインのチャージには料金は発生しないが、事業者間の送金や現金への交換には手数料が発生。また、決済手数料は1.5%とクレジットカードと比較すると低いレートで提供しているのは強み。ただ、儲かる事業かといえば、決してそうではなく、利益創出を強く望んでいるというよりかは、信用組合らしく、流入した「お金」を域内に留めて循環させるための施策とのこと。また、コインには有効期限があり、最後に利用した日から1年後には、失効してしまう。これは消費を促進させる狙いがあるのだろうが、貯蔵手段という観点から見ると、通貨自体のメリットが減ってしまう諸刃の剣のように見える。

 

newspicks.com

 

後者のPayどんについても、決済手数料は1.5%と低水準だが、こちらはこれといった還元サービスがありません。

webkikaku.co.jp

 

両者共通しているのは、ユーザ側に地域性を訴求しているのみならず、金融機関ならではの狙いがあることです。どちらのPayも開発元の銀行口座が必要となりす。通常、銀行間の送金にはそれを繋ぐネットワーク(全銀システム)の利用が必須となるため、そこで手数料が発生してしまいます。ただ、登録する銀行口座を自行のみとすることで、その手数料が必要なくなります。

 

また、利用には地銀講座が必要ということで、それをフックとした融資や貸出の増加というのは間接的に寄与していくでしょう。

 

一方で、これら地域通貨を一掃する勢いで躍進しているのがPayPayやd払いを代表とする大手資本の電子マネーがあります。PayPayは100億円キャンペーンを3発したことで、認知度98.9%(19年10月時点)と、ほぼ全国民にリーチしました。還元率も高く、サービス展開の速い大手資本のサービスに、地域通貨がどれだけ対抗できるのかは疑問です。

 

長々と書いてきましたが、通貨は結局、ネットワークエフェクトと還元率の問題に収斂するので、体力勝負となります。キャッシュポイントが既存の手数料と僅かな金利差しかない金融機関が発行体である以上、相手にならないでしょう。増してや、地域限定という縛りは綺麗に見えますが、ネットワークエフェクトの点で絶望的に不利です。なんだか身も蓋もない話ですが、少なくとも「地域通貨」は難しいだろうという結論です。

 

ただ、違う形でお金が地域に流れる可能性はあると思っています。

 

それは何故かというと、中国のデジタル人民元や、FacebookのLibraなど、ブロックチェーン技術をバックにした、通貨のデジタル化が加速しているからです。将来的には日銀も円をデジタル化していく流れになるのは不可避です。

 

通貨のデジタル化は、国際送金ならSWIFT、国内の送金なら全銀システム、クレジットカードのトランザクションならCAFISといった、既存の中央機関を不要にする(人手⇒コンピューティングというコストの極小化)ことで、圧倒的に通貨の流れを滑らかにします。お金が滑らかに動くことによって、あらゆる債権の証券化や小口な貸付サービス、マイクロファクタリングなど、新たなサービスが登場する可能性があります。それが結果的に、地域の中小企業のような、これまで捉えられなかった需要にヒットして、結果として地域還流になるかもしれません(その時、地方金融機関があるかはわかりませんが・・・)。