悲しき社畜が経済的自由を目指すブログ

これは、悲しき社畜が経済的自由を目指す物語である。

「リスクオフの円高」の終焉

さてさて、今回は為替について少し語りたいと思います。

 

No.1エコノミストが書いた世界一わかりやすい為替の本

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  • 作者:上野 泰也
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為替レートの変動要因

以前の記事でも書いたのですが、短中期の為替レートは以下の3要因により変動します。

①経常収支フロー

②債権国フロー

③調達金利

 

では、今の円はどうなっているかというと、確かに最近は大きく変動していますが、昔ほど変動は少なくなっていると考えます。その理由は上記の①と③の変化にあります。

 

syachiku-finance.hatenablog.com

 

日本の経常収支について

まず①についてですが、収支の構造が2000年代前半と明らかに変わっています。

何が変わったのかというと、貿易黒字の縮小と所得収支の拡大です。

 

貿易収支については、東日本大震災以降、原子力発電の長期停止による燃料調達による貿易赤字がありましたが、現在は以前と同水準に戻っていますが、依然として原子力が止まっていますので、貿易赤字側への圧力はあります。

 

所得収支について、正確には第一次所得収支ですが、定義は以下の通りです。

第一次所得収支 対外金融債権・債務から生じる利子・配当金等の収支状況を示す。 次所得収支 居住者と非居住者との間の対価を伴わない資産の提供に係る収支状況を示す。 官民の無償資金協力、寄付、贈与の受払等を計上する。

日本は世界一の対外債権保有国です。第一次所得収支の推移をみると、右肩上がりを続けています。今までのように貿易で稼ぐのではなく、投資収益が経常黒字をけん引する構図が見て取れます。

www.nippon.com

biz-journal.jp

 

調達金利について

③についてです。以前は他国通貨と比べて安い日本円は、需要旺盛でいわゆる円キャリートレードが盛んにおこなわれていました。しかし、景気後退局面になると、投資家は借りた資金を返しますから一気に円に戻す動き、つまり円買い圧力が生じます。日本は確かに貿易黒字国なので、恒常的に円買い圧力がありますが、低金利通貨に起因する円高圧力によって、ドルよりも遥かに強い円買い圧力がかかっていたのです。

 

ただ、昨今の世界的な金融緩和により、以前ほど円の金利に魅力はなくなりました。今はむしろユーロの方が安いのではないでしょうか。そのような背景もあり、以前ほど円買い圧力は大きくないと思われます。

 

最後に

円は以前から「安全通貨」と言われ、有事の際には一気に高くなる性質を持っていましたが、その構造は少しずつ変わってきています。経常収支の構造と資金調達環境の変化により、円高圧力は薄れ、変動率は以前より限定的になっています。

 

jp.reuters.com

以上、為替というのは様々な要因が関係しあっているので、固定的な観念は長く通用しません。背後の関係を理解しながら為替を見ていきたいですね。