悲しき社畜が経済的自由を目指すブログ

これは、悲しき社畜が経済的自由を目指す物語である。

企業分析:HOPE(6195)

では、久しぶりに企業分析をしてみます。

 今回は自治体向けサービスを提供しているHOPE社についてです。

まるわかり電力システム改革2020年 決定版

まるわかり電力システム改革2020年 決定版

 

 

1.企業概要

とりあえずwikiから引用します。

株式会社ホープ(HOPE, INC.)は、福岡県福岡市に本社を置き、自治体が所有する様々なスペース(広報紙・WEBページ・給与明細・庁舎内)に広告枠を設け、掲載料の一部を自治体の歳入に充てることで自治体の財源確保を支援する企業[1]。2016年6月15日に東証マザーズ、福証Q-Boardに上場。

創業は2005年、有限会社ホープ・キャピタルという社名でした。祖業は自治体が保有する遊休スペースの広告事業化のサービス「SMART RESOURCEサービス」であり、2013年には自治体情報誌の政策無償請負サービス「SMART CREATIONサービス」も提供。2014年には、広報紙等自治体情報配信アプリ「マチイロ」、自治体向け営業活動の支援・代行等、現在に至るまで、自治体向けの多様なサービスを提供してきていることがわかります。2019年にはエネルギー事業にも進出、後述しますが、大きな成長エンジンになっています。

2.財務状況

BS、PL、CSを順番に見ていきましょう。

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BSを見てみます。年々規模が大きくなっており、年々借方の売掛金や貸方の買掛金が増えていることがわかります。有利子負債は高水準であり、中長期的な健全性を示す自己資本比率を見てみると、2020年時点で14.8%と高いとは言えません。

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次にPLを見ます。売上高については見事な右肩上がり。営業利益についてはバラつきが見られ、2020年に大きな伸びを見せています。

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次はCSです。直近数年は営業CF、投資CF、FCFはマイナスですが財務CFはプラスです。つまり稼いだ資金で運営してきたというよりかは、都度借入をして経営してきた会社ということがわかります。

3.事業状況

同社には、広告事業・メディア事業・エネルギー事業の3つの柱があります。

①広告事業

自治体から様々な媒体の広告枠を入札で仕入れ、民間企業に販売するSMART RESOURCEサービス、自治体が住民向けに発行する冊子の広告枠を募集し、自治体には冊子を無料で協働発行するマチレットを提供。FY2020における売上高は前期比15.3%減、セグメント利益は10.7%増。

②メディア事業

今まで培ってきた自治体のリレーションを活用し、自治体と民間企業のニーズを繋ぐマーケティングの積極展開や、オリジナルメディア「ジチタイワークス」の発行をしている。FY2020における売上高は前期比30%増、セグメント利益は263.5%増。

③エネルギー事業

自治体の経費削減を支援したいというポリシーで電力販売事業「GENEWAT」を展開。順調に拡大中。FY2020における売上高は前期比769.6%増、セグメント利益は1,035.8%増。

事業の全体像

事業ポートフォリオについて見てみましょう。3つの事業とも増収増益であり売上高YonYは241.2%と絶好調です。売上高124億円のうち、エネルギー事業は103億円と大半を占めています。エネルギー事業がかなりの速度で成長していることがわかります。コロナにより調達価格が想定以上に下落のため10憶円の利益となったようですが、今後同レベルの利益率は困難であるとも読めます。

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4.成長性について

広告事業については、経営計画資料を読むと自治体広告市場は140憶円であり、同社の売り上げは18憶円程度と市場シェア12.8%を取っている。数十億程度の伸びしろはあると思われる。

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メディア事業については、自治体プロモーション市場は152億円と見られており、そのうち同社は1.3憶円を占める。こちらも数十億程度の伸びしろはあるとみる。

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一方、成長の柱となるエネルギー事業は、主に自治体向けに特化しています。下記レポートを見ると、販売先を地方自治体に絞り込むことで12名の担当者で運用していることが記されています(2020年6月時点)。自治体電力市場は1兆円とあり、伸びしろは他2事業と比較してもかなり大きいものと言えます。

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2020年ビジョンでは、FY2030の売上高を1,000億円、営業利益を100億円としています。FY2020の売上高は124億円、営業利益は10億円なので、10倍ほどの規模をめざしていることがわかります。

4.強み

強みは何と言っても自治体とのリレーションです。祖業から自治体との関係性を強めてきているため、それをキックとした関連事業を始めやすい企業であるといえます。実際に、宮城県東松島市とは、地域新電力事業を始めており、エネルギー事業については入札だけでなく更に踏み込んだ事業をしていく可能性があります。自治体の電力事業は毎年入札のケースが多いですが、関係が強まれば毎年入札がなくなり、収益性が安定する可能性があります。

5.懸念事項

懸案事項は、財務リスクです。CSを見ても、営業CFとFCFがプラスになっておらず、外部の資金調達に依存したビジネスモデルであることがわかります。実際に、経営計画資料においても、その点は自覚的であり、エクイティ・デット双方の資金調達を活用していく旨は書かれています。

また、成長エンジンはエネルギー事業ですが、電力事業は、仕入れから収入までのサイクルが長く、回収まで数か月要します。そのため、契約が増えれば増えるほど資金繰りが大変になる事業です。実際に、急激な有利子負債増加の要因は、自治体への差入補償金によるものであり、今後も契約が増加するにつれて有利子負債も増加する構造になっています。

更には、発電所を持っていないため、電力全てを市場から調達しています。IR資料では、コロナにより調達単価が下落とありますが、今後市場の乱高下により、調達価格の上昇もあり得ます。そのような状況になった場合、同社の資金繰りに懸念が出てくる可能性があります。

6.市況状況(2020/8/27時点)

市況は以下の通りです。売上5y CAGR(予想)94.3 %であることを考慮すると、PERは割安と言えます。FY2030の利益予想を考慮すると、EPSは1150円程度となり、PER20の場合に株価は、1150*20=23,000円とまだまだ上昇余地があります。買い時かもしれません。

時価総額:324億円

株価:5,400円

予想PER:32.27

予想EPS:115.3

 

7.まとめ

同社は、自治体向けサービス事業というユニークな業態であり、その強みを生かしたエネルギー事業で急速な成長を企図しています。ただ、電力事業は、資金回収サイクルが遅く資金繰りに課題があること、毎年の入札で大手電力に勝てるとは限らないこと、市場に依存しているため電力の価格変動リスクをもろに食らうことなどリスクは結構あります。

価格競争に突入してしまうのがエネルギー事業ですので、今後中長期で勝ち続けるのは至難の業でしょう。ただ、市場が1兆円とバカでかく、短期的には成長は続くとみています。