悲しき社畜が経済的自由を目指すブログ

これは、悲しき社畜が経済的自由を目指す物語である。

認知的不協和について~持たざる者の願いと現実について

明けましておめでとうございます。

大してアクセス数がないブログではございますが、本年もよろしくお願いします。

 

さて、2020年最初のエントリですが、若干趣旨が変わったものとなります。

 

「高学歴は勉強しかしていないから感受性やコミュニケーション能力に乏しい」

「金持ちは卑怯なことをしているから儲かっている」

「美人は性格が悪いに違いない」

 

上記の台詞ってよく聞きますよね。

以前、「有名大学出身なのに仕事ができないやつがいた」と喜んで話す方がいました。個人的には何でその事実が嬉しいんだろうという思いを抱きつつ、その方の心理傾向について分析したことがあります。

 

ありきたりな結論ですが、彼は認知的不協和の解消によって喜んでいました。

globis.jp

 

認知的不協和とは、自身の中で矛盾した認知を抱える状況のことです。心理学で有名な逸話として「すっぱい葡萄」というものがあります。

 

葡萄を食べたい狐がいましたが、どうしても葡萄に手が届かず諦めてしまいます。しかし諦めた自分という事実と、葡萄を食べたかった感情が衝突を起こしている状態です。

 

この場合、事実は変えることができませんから感情のほうを事実に寄せて修正する必要があります。

 

そうすると狐の感情はこのようになります。「どうせ酸っぱい葡萄だから食べなくて正解さ」。

 

さて、話が戻りますが「仕事のできない高学歴」の存在が嬉しい彼の心理は同じような構造だと思います。まず前提として、彼は高学歴ではありません。高学歴であれば、仕事のできない高学歴の存在に恨みこそすれ、嬉しいことはありません(もしかしたら個人的に嫌いな人なら嬉しいかもしれませんが)。

 

高学歴ではない彼からすると、高学歴かつ仕事もできる人の存在は自らの価値を損なうものです。「仕事ができたとしても学歴で勝てない」。彼の勝てるところが無くなってしまうからです。

 

しかし、「高学歴で仕事ができない人」がいると、その不協和を消してくれる福音となります。「高学歴でも仕事は自分の方ができる」という風に。

 

ただ現実的に考えると、仕事なんて沢山の種類がありますから、あらゆる業務に対して学歴と仕事の優秀さに相関があるわけではありません。論理的な思考力が必要なく、機動性や体力が必要な仕事であれば相関性はほぼないでしょう。

 

ただ、彼のマインドセットは「高学歴であれば仕事もできる」という常識と同時に高学歴で仕事ができるなんて許せないというアンビバレントな状態となっていたため、高学歴だが仕事ができない者を認知することで解消されたのです。

 

さて、無理やり株式投資に結び付けて見ましょう。

大事なのは事実を最も重視することです。「こうあるべきだ」という思いや感情は、物事への視点や視差を見落とすことに繋がります。酸っぱい葡萄食べられなかった狐の逸話で言えば、食べられなかったとしても葡萄を酸っぱいと断定してはいけないのです。本当に美味しい葡萄であれば、工夫を施すことでありつける可能性があります。

 

仕事のできない高学歴の存在が嬉しい人の例で言えば、業務と学歴の相関を断定しないこと、そもそも高学歴ではない従業員がマジョリティの会社に入る高学歴者というのは、その大学の中の下位層だったのではないか?という仮説を立てることもできます(そんなこと考えるわけがないのですが)。

 

とまあ、認知的不協和が存在すると、現状認識をゆがめさせてしまいます。株式投資は市場が下がっているときに買うほど利益率は高くなります。勝手に儲からない市場や業界と決め付けてしまうと、イノベーションや新しいビジネスモデルが登場した際に大きな利益をとることができません。

 

認知的不協和に抗うことは、メンタル的な強さが必要ですし誰でも簡単にできることではありません。ただ、徹底的に事実と向き合うという姿勢は常に持っておきたいというお話となります。

 

 

 

 

地域通貨についての考え方

近年、ブロックチェーン技術の登場により分散型社会へのトレンドとなっており、出ては消えた地域通貨も流行りが見えます。

 

地域通貨で実現する地方創生

地域通貨で実現する地方創生

 

地域創生、地産地消の観点から、地域通貨のコンセプトは、富が域外に流出しないという点において望まれているものなのは間違いありません。しかし、望まれていながら何故今まで普及していないのかというところを考察してみようかと思います。

 

結論から言うと、通貨のシェアはネットワークエフェクトに因るものであり、還元率の高い大資本のペイメントサービスの方が普及していくでしょう。また、今後はリブラ的なグローバル通貨が登場することで、各国の通貨が相対的に「地域通貨」となり、価値が減衰していくのだろうと思っています。

 

まず、通常の通過(法定通貨)の機能は何でしょうか。一般的には、価値尺度・交換手段・貯蔵手段の3つとされています。

 

価値尺度については、通貨により価値が定量化できれば、あらゆる物やサービスの価値についての物差しとなります。交換手段については、定量化することにより異なるモノの交換がスムーズになります。貯蔵手段については、モノは時の経過により腐敗、朽ちるものですが通貨は腐らずに貯蔵可能です(物価変動により増減はしますが)。

 

一般的に考えられるこれらの機能において、地域通貨が優れた価値を出すことができれば普及しているはずですが、現状そうなってはいません。何が原因なのでしょう。それぞれの機能ごとに考えます。

 

価値尺度⇒ほぼ全ての地域通貨は、尺度が法定通貨にペッグされており、日本円の価値と等価です(日本円と異なる単位である時点で、利便性は低下します)。尺度として、法定通貨に勝る要素はありません。

 

交換手段⇒地域内では不便がないかもしれませんが、地域通貨はその名のごとく、域外で使えません。流動性の低さという観点から地域通貨法定通貨と比較してディスカウントされます。この流動性というネックをカバーしうるほど圧倒的なメリットが無い限りは、使う誘因は少ないと思われます。

 

価値貯蔵⇒この点にも法定通貨の圧倒的な強さがあります。通常、法定通貨普通預金に入れてさえいれば、最低1,000万円までは法律で保護されます。一方で、地域通貨は主体がどうあれ、法的な保護がありません。法的な枠組みでもない限り、いつ無くなるかわからない地域通貨で資産を保管しておく理由はありません。貯蔵の観点から、法定通貨を上回る価値を出すのは難しいでしょう。

 

以上を踏まえると、価値尺度・価値貯蔵の点では訴求ポイントを見出すことは難しく、交換手段の部分で如何に優位点を作っていくかが論点となるでしょう。

 

地域通貨について、あまりポジティブな話をしてこなかったのですが、一方で話題を呼んでいる地域通貨は幾つか存在します。飛騨信用組合の「さるぼぼコイン」や鹿児島銀行の「Payどん」が代表的なものです。

 

まず前者については、今年の11月時点でユーザは約1万人。ボリュームゾーンは、50-70代の女性という。1%の還元率が、中高年女性にウケているようです。コインのチャージには料金は発生しないが、事業者間の送金や現金への交換には手数料が発生。また、決済手数料は1.5%とクレジットカードと比較すると低いレートで提供しているのは強み。ただ、儲かる事業かといえば、決してそうではなく、利益創出を強く望んでいるというよりかは、信用組合らしく、流入した「お金」を域内に留めて循環させるための施策とのこと。また、コインには有効期限があり、最後に利用した日から1年後には、失効してしまう。これは消費を促進させる狙いがあるのだろうが、貯蔵手段という観点から見ると、通貨自体のメリットが減ってしまう諸刃の剣のように見える。

 

newspicks.com

 

後者のPayどんについても、決済手数料は1.5%と低水準だが、こちらはこれといった還元サービスがありません。

webkikaku.co.jp

 

両者共通しているのは、ユーザ側に地域性を訴求しているのみならず、金融機関ならではの狙いがあることです。どちらのPayも開発元の銀行口座が必要となりす。通常、銀行間の送金にはそれを繋ぐネットワーク(全銀システム)の利用が必須となるため、そこで手数料が発生してしまいます。ただ、登録する銀行口座を自行のみとすることで、その手数料が必要なくなります。

 

また、利用には地銀講座が必要ということで、それをフックとした融資や貸出の増加というのは間接的に寄与していくでしょう。

 

一方で、これら地域通貨を一掃する勢いで躍進しているのがPayPayやd払いを代表とする大手資本の電子マネーがあります。PayPayは100億円キャンペーンを3発したことで、認知度98.9%(19年10月時点)と、ほぼ全国民にリーチしました。還元率も高く、サービス展開の速い大手資本のサービスに、地域通貨がどれだけ対抗できるのかは疑問です。

 

長々と書いてきましたが、通貨は結局、ネットワークエフェクトと還元率の問題に収斂するので、体力勝負となります。キャッシュポイントが既存の手数料と僅かな金利差しかない金融機関が発行体である以上、相手にならないでしょう。増してや、地域限定という縛りは綺麗に見えますが、ネットワークエフェクトの点で絶望的に不利です。なんだか身も蓋もない話ですが、少なくとも「地域通貨」は難しいだろうという結論です。

 

ただ、違う形でお金が地域に流れる可能性はあると思っています。

 

それは何故かというと、中国のデジタル人民元や、FacebookのLibraなど、ブロックチェーン技術をバックにした、通貨のデジタル化が加速しているからです。将来的には日銀も円をデジタル化していく流れになるのは不可避です。

 

通貨のデジタル化は、国際送金ならSWIFT、国内の送金なら全銀システム、クレジットカードのトランザクションならCAFISといった、既存の中央機関を不要にする(人手⇒コンピューティングというコストの極小化)ことで、圧倒的に通貨の流れを滑らかにします。お金が滑らかに動くことによって、あらゆる債権の証券化や小口な貸付サービス、マイクロファクタリングなど、新たなサービスが登場する可能性があります。それが結果的に、地域の中小企業のような、これまで捉えられなかった需要にヒットして、結果として地域還流になるかもしれません(その時、地方金融機関があるかはわかりませんが・・・)。

企業分析:クイック(4318)

御無沙汰しております。

偶然、面白い会社を見つけたので分析をしてみます。

いつも通り、GMOクリック証券とバフェットコードを活用しながら書いていきます。

 

 

1.基礎情報

企業概要

大阪に本社を置く総合人材サービス企業。1980年創業の老舗。2001年に東証一部上場。看護師や建設関連など専門職の人材紹介・派遣が中心。

 

求人広告、人材紹介、人材派遣、紹介予定派遣、業務請負の人材サービス4事業形態の他、人事労務コンサルなど周辺事業も運営。中でも労働需給がタイトになりがちな専門職の人材領域に強みがある。

 

同社は、人材サービス事業、リクルーティング事業、情報出版事業、その他の5事業を展開しているが、人事サービス事業とリクルーティング事業で売上高の82%、営業利益の93%を占めるがその他の事業も活発な動きを見せている。

 

 

 

財務状況

BSを見ると、自己資本比率は文句なし、現金も潤沢。右肩上がりの成長が見て取れます。

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PLも、5yベースで売上CAGR13.8%、営利CAGR14.7%、純利CAGR14.3%と右肩上がり(バフェットコードより)。

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CSについてもFCFが安定的に創出されています。財務的には全く問題ない、というか素晴らしいと思われます。

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市況

時価総額は約269億円と小ぶりな企業。株価は軟調。予想PERは15.38倍と、東証一部の平均PER(15倍程度)同程度。

 

予想ROEは21.5%と高い。自己資本比率が72.9%と十分に高いため、高い資本効率ということが見て取れる。配当利回りも3%とそこそこ。配当性向は40%と毎年少しずつ上げてきている。

 

株主構成をみると、(有)アトムプランニングが26.6%の筆頭株主。次いで、日本マスター信託口や日本トラスティ信託口等のカストディアンが続き、和納氏や中島氏等の経営陣が名前を連ねる。

2.戦略と目標

競争戦略

求人広告、人材紹介、人材派遣、業務請負等、総合人材サービスを事業としているが、中でも医療機関を対象とした看護師や建設・プラント系エンジニアなど、専門・特定分野の紹介に強みを持っている。とはいえ、こうした分野でも競争が激化しているので、どのように差別化するかが焦点となります。 

経営目標

決算説明資料とフィスコのレポートより分析。

2030年に1,000億円企業を目指して、既存事業の成長と新規事業の育成に向け積極的な投資を継続するとしている。一方で、M&Aの実施やAI技術による新たなビジネスモデルの開発を進める予定。

 

国内の少子高齢化労働人口の減少により、国境を越えた人材サービスが増加する見通しのため、グローバルな人材流動化に向けたクロスボーダー転職市場の開拓等、グローバルHRビジネスを先駆的に進める。

 

2021年3月期売上高23,850百万円、営業利益3,430百万円を目指す。

 

3.強みについて

雇用情勢の追い風

有効求人倍率など見ていても、雇用情勢は改善を続けています。人手不足を背景に、需要はまだまだ旺盛。

専門職領域の強み

前述しましたが、専門職に強みを持っている企業。とはいえ、コモディティ化しやすいビジネスではあるため、バフェットさんが言うような堀はあまり無いように見える

 

4.目標株価

株価=EPS×PERとして理論株価を算定してみます。

連21.3のEPSは116.7 なので、そこに成長を加味したPER(今は15なので20に上がると希望的に設定)すると、116.7×20=2,344円となります。

 

2019/11/22時点での株価は1,628円ですので、まだまだ上昇余地はある企業と判断します。

5.まとめ

業務上、たまたま認知した企業だったのですが、四季報を見たら中々有望株だったこともあり分析してみました。今の持ち株的に購入はできておりませんが、バリュー・グロース的にもオススメできる銘柄だと思います。 

<参考>

2019年3月期決算資料(2019/5/9)

https://919.jp/wp/wp-content/uploads/2019/05/19.5.9.10_19.3_setsumei.pdf

 フィスコ企業調査レポート(2018/12/14)

http://fisco.jp/news/pdf/919_20181214.pdf

 

ブロックチェーンは何がすごいのか

ブロックチェーン技術について、頭の整理を兼ねて書き連ねていきます。

結論だけ先にいうと、価値の流動性を圧倒的に高める技術ということです。 

 

 

さて、論述していきます。

ブロックチェーン技術とは、以下の特徴を備えた技術です。

①改竄不可能性

②追跡可能性(トレーサビリティ)

③非中央集権性

 

ビットコインを例にすると、PoWというコンセンサスアルゴリズムによって成立しており、悪意を持った者が取引情報を改竄しようとしても、そのためにはネットワーク全体の半分以上のCPUパワーが必要となり、事実上改竄ができない仕組みになっています。このPoWによって、ビザンチン将軍問題という数学的な問題を解決できたということで、ブロックチェーン技術は一躍、革新的な技術として取り上げられました。

bitflyer.com

 

時系列の情報を逐次ブロックに格納していくため、追跡可能性も持っており、それらは中央管理者がいなくとも成立するというのは凄いことです。

 

また一言でブロックチェーンと言っても、パブリック型やコンソーシアム型、プライベート型などあり一長一短です。非中央主権性とスケーラビリティと安全性の3つとも満たすものはなくトリレンマの関係にあります。例えばパブリック型は、管理主体がない代わりに承認に時間を要してしまいます(スケーラビリティの欠如)。これは悪意を弾くコストと言ってもいいでしょう。現在、商用的に有力なのはバランスのいいコンソーシアム型です。

medium.com

 

とはいえ重要なのは、ブロックチェーン技術によって何ができるのか、です。ここまではブロックチェーンがどう動いていてどういう特徴があるのかというHowの部分でした。

 

ブロックチェーン技術は「価値のインターネット」と言われています。何のことやらという感じですが、情報にローコストで価値を乗せることが可能になる技術だということです。価値のやり取りが滑らかになると言った方がよろしいかもしれません。

 

それなら今もできてるじゃないかと言われるかもしれません。株式投資や買い物だってスマホでできますからね。しかし、考えてみてください。株式投資は証券会社から証券取引所、他にもさまざまな機関が仲介して非常に複雑なプロセスを踏んでいますし、ECだってクレジットカード会社が間に入っており、中のプロセスは滑らかではありません。つまり、価値のやり取りにはユーザからは見えませんが莫大なコストが生じています。

 

契約書の印鑑はなぜ必要なのか。データでやりとりすればいいじゃないか。そこにデータの特徴が現れます。複製可能性と改竄可能性です。データでのやりとりだとコピーはすぐに取れるし、すぐに改ざんができます。メールに千円と書いても千円の価値はありません。そのようなデータの弱点を補うために、紙媒体での契約書なるものを作成しているわけです。「電子証明書があるやんけ」という意見もあるでしょう。電子証明書は、指定認証局が発行している証明書であり、存在証明と非改竄証明ができます。確かにこれによって担保可能ですが、先述したようにコストの改善余地があります。ブロックチェーン技術は、これを更にプログラマブルに、ローコストで実装できるポテンシャルがあると見ています。以下の記事は大変面白かったです。

 

ブロックチェーンは単なる電子化ではないのか? - Corda japan - Medium

ブロックチェーンって何が嬉しいの? - Corda japan - Medium

 

 

ブロックチェーン技術は、改竄不可能性・追跡可能性をテクノロジーで達成できる(中央管理者不要)ため、誰もがローコストで情報に価値を乗せることができる技術です。そうなると電子カルテのデータや戸籍情報のような機微な情報も安心して、各主体を跨いだ移転が可能となります。

 

こう書いてみると夢のような技術だと思われるかもしれませんが、既に実用化しています。海運サービスの世界的企業であるモラー・マースク社とIBMは、ブロックチェーン技術をベースにしたサプライチェーンプラットフォーム「TredeLens」を共同開発。2018年12月に商用サービスとしてスタートしています。

https://www.tradelens.com/

 

貿易というのは、信用リスクが大きい世界です。詐欺が起きないようにするための確認フローに多大なコストが発生していましたが、ブロックチェーン技術でカバーすることにより膨大な手間とコストを削減できるようです。

 

世界銀行も債券発行にブロックチェーン技術を活用しています。詳しくは以下の記事。

www.worldbank.org

 

以上のように、ブロックチェーン技術は価値のやり取りの場に導入されつつあります。ブロックチェーン技術とは一言でいうと、情報に価値を乗せることで、あらゆる価値の流動性を高め(価値のインターネット)、ガバナンスが利かない主体同士でのデータやワークフローの共有という価値を生み出します。既に実用化段階に移行していますが、disruptionが初めに起こるのは金融領域でしょう。インターネットによって情報コストが劇的に下がることで誰もが個人でメディアを持つことができたように、銀行でなくてもだれもが売掛債権や事業を証券化できるようになれば、世界は圧倒的に便利なものになります。

 

例えば、研究者であれば将来の研究成果を担保に資金調達ができるかもしれませんし、未上場企業であっても、上場企業と同程度の流動性を持つことが可能となる可能性があります。

 

LayerXという会社がありますが、そこの代表の福島さんの記事はとても切れ味ある面白い内容なのでぜひ読んでみてください。

 

情報と価値についてもわかりやすく書かれています。

note.mu

www.fastgrow.jp

 以下、印象に残った言葉を引用してきます。

 

では、ブロックチェーンでは、どのようにして「利用すると権利が確実に相手に移る」ことを保証し、また「データがコピーできない」ことを実現しているのでしょうか。技術的な解説は散々されているので、ここでは概念的な説明にとどめたいと思います。

ブロックチェーンは上記を「数学的、暗号学的」に保証しています。データと状態遷移が共有されたプログラムで規定され、またそのプログラムが動作していることが暗号的に保証されることで、「利用すると権利が確実に相手に移る」ことを保証し、また「データがコピーできない」ようにしています。(電子署名とノードの分散共有+コンセンサスによってそれを実現しています)

ネットバンクとブロックチェーンは、消費者からすると一見同じように見えますが、ネットバンクは究極的には、信頼できる主体による「人手」で価値を担保しているのに対し、ブロックチェーンは「コンピューティング」で、データそのものによって価値を担保しているのです。

そして、「価値の担保」のコンピューティング化は、「オープン」で「低コスト」で「自動的に決済が行われる」価値のネットワークを生み出します。

 

 

福島昔は店舗を構えないと小売ビジネスが手がけられなかったのが、ECサイトの登場によって誰でも店を出せるようになりました。また昔はテレビのネットワークに乗らないとメディアを作れなかったのが、インターネットの登場により情報発信が民主化されました。同じように、誰でも簡単に証券化や送金、ファクタリングが行えるようにする、金融プラットフォームをつくろうとしているんです。

 

福島 一般的にイメージされるような、派手で分かりやすいものではないかもしれませんが、確実に世界を良くする応用例は出てきています。もしブロックチェーンの活用方法に悩んでいます」と言っている人がいたら、その時点で業界アウトサイダーだと分かる。「ものを作っていない」と告白しているのと同義です。

僕はブロックチェーンや分散台帳技術が何かしらのインフラになることは、確定した未来だと思っています。「インターネット」が意味するものが時代と共に移ろっていったように、現在「ブロックチェーン」と呼ばれているものとは別の形になる可能性はありますが、デジタルな信用社会がつくられていく流れは止まらないでしょう。

 

福島 既にお金が支払われている領域で、より良い解決手段や優れた体験を得られるようにサービスを作っていくのは、ビジネスの基本なはず。しかし、ことブロックチェーンの話になると、「今までに存在しなかった何かが突然生まれて、そこになぜかお金も払ってくれる」妄想が跋扈しがちです。

たとえば、ブロックチェーンの実装例として、ブランドの産地証明での活用例などが挙げられます。ただ、いまブランド品が本物であることの証明にお金を払っている人って、ほとんどいませんよね?だからこそ貿易や金融のように、既にコストが発生しているプロセスにブロックチェーンを活用することで、より優れた体験を生み出せる領域から攻めていくのが確実です。

 

ビットコインによって普及したため、ギャンブルと言う色物扱いの風潮がありますが、既に確かに世界を良くしつつある技術です。これからもウォッチしていきたいと思います。

『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』を読んで

ネット界隈では割と有名な、ふろむだ氏の本を読みました。

 

前のcisさんの本でもそうなんですが、一度読んだ本はこうやって記事にしておくと、読み直さなくても、どんな内容だったか思い出せるのでなかなかいいなあと思ってたりしてます。

人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている

人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている

 

 

1974年、カナダで選挙があった。その選挙を調査したところ、イケメンの政治家は、そうでない政治家の2.5倍もの票を獲得していた。 

 「そりゃそうだろ」と思うところですが、興味深いのは、投票した人は「イケメンだから投票した」と考えていないところです。「人柄が信頼できる」とか「経済政策に期待できる」とかの別の理由で投票したらしいのです。

 

これって結構驚きですよね。イケメンだから票は取りやすいという事実は想定どおりなものの、人間の意識と実行動は結構違うことがわかります。これは思考の錯覚と言えるでしょう。

 

ここで重要なのは、「人々が自分に対して持っている、自分に都合のいい思考の錯覚」 は、一種の資産として機能するということだ。本書では、これを「錯覚資産」と呼ぶ。

このような錯覚を資産としてみなすというのは面白い考え方です。無意識に資産として機能してしまうこの種の錯覚を活用しようというのがこの本のエッセンスでしょう。

 

思考の錯覚は、自覚できない。

 

だから、錯覚資産は、目に見えない分岐となる。

 

「レーダーに映らない」という特性が、ステルス戦闘機を極めて優秀な兵器にしているように、

 

「自覚できない」という特性が、錯覚資産を極めて優秀な武器にしているのだ。

 例として、起業という行為を考えてみましょう。0からビジネスを立ち上げる場合、どんなに優秀でも運の要素は非常に大きいです。しかし、一度成功した起業家は「錯覚資産」を手に入れます。一度成功したが大半の要素が運によるものだとしても、人々は「起業の成功者」と認識し、その起業家は錯覚資産を手にします。

 

その錯覚資産は、人材や資金の調達、製品の売上を用意にし、錯覚資産を保有していない他の起業家よりも、遥かに高い成功確率となるわけです。

 

「世の中不公平だ!」と思うのも自由ですが、このような事実がある以上、活用したほうがいいですよね。

 

とまあ、まだまだ面白い話はあるので是非お手に取ってみてください。

 

『テクノロジー思考』を読んで

テクノロジー思考 技術の価値を理解するための「現代の教養」

テクノロジー思考 技術の価値を理解するための「現代の教養」

面白い本を読みましたのでシェアします。

インターネットは成長産業ではない

iPhoneすなわちスマートフォンが世にデビューしたのは2007年。以来、十余年が過ぎ、2017年にスマートフォンの世界出荷数の伸びは止まった。自動車や洗濯機、冷蔵庫、電子レンジですら年数%伸びているのに、である。

 

これと同時にインターネット利用者人口も2桁成長を割り込み、低成長時代へと突入した。

 

日本の総務省発表によるインターネット普及率は、2013年に80%を超えて以来5年以上年1%も増えておらずフラット化している。その一方で総人口は一貫して減少し続けているのだから、2017年に日本のインターネット利用者数はとうとう減少に転じた。

 

インターネットの外のレースが始まっている

インターネット産業が成熟してしまった今日において、引き続き世界に星の数ほどあるスタートアップ はどこに向かっているのか。答えは簡単、「インターネットの外」である。

 

医療、交通、物流、教育、製造など、リアルでフィジカルな世界をテクノロジーで再定義する競争が既に始まっている。一般にデジタルトランスフォーメーションと言われているのも、これと同義と考えて差し支えない。

物流革命 フィジカルインターネット:日経ビジネス電子版

↑この記事も当該内容と同じような感じです。

 

インターネットの中でも最もトランスフォーメーションされた産業は広告産業である。加えて広告収入の「撒き餌」であるところのコンテンツ産業であった。

 

広告とコンテンツの事業構成要素はほぼ100%データである。故にインターネットの登場以来、四半世紀で最もデジタルトランスフォーメーションが進んだ。

 

20191月時点での米国スタートアップ 時価総額ランキング上位からUber(交通)、WeWork(オフィス)、Airbnb(宿泊)のトップ3全てが「インターネットの外」が主戦場のビジネスを展開している。

 

インターネットの外の産業は、デジタルで完結するインターネット産業と異なり、まるでシリアスであり収穫逓増期までに時間がかかる。タックルせんとする産業の構造、実情を深く理解していなければならない。

 

インターネットによってデジタルトランスフォーメーションされた最大の産業は、広告とコンテンツ産業だった。また、金融はそれ以前からデジタル化オンライン化が着実に進んできた。

 

ではその次、インターネットの外のレースが開幕した今、それが最も激しく起きている激震地産業はどこか。

 

答えはモビリティとヘルスケアである。元来GDP構成比も大きく、人間にとって必要性、喫緊性が高い2大産業が、デジタルトランスフォーメーション全盛の今、最も世界中から資金が注がれている分野である。

 

なぜ現代は、イノベーション至上主義の時代なのか

イノベーション現代社会における金科玉条である。これに取り組まないものは無能、または悪である。好むと好まざるに関わらず、これが世界の常識になった時代に我々は生きている。

 

人類のイノベーションの需要が高まると何が起こるか。その値段が上がる、というのが正解である。イノベーションはインフレしている。これからもどんどんインフレする。ユニコーン、すなわち時価総額10億ドル以上の未上場企業をそう呼んでブーム化している理由もそこにある。

 

イノベーションを実現するのに最も適した組織体がスタートアップである。ゆえに皆がスタートアップを追い求め、その値段が上がる。

 

イノベーション至上主義とインフレは、一方であるものをデフレさせている。失敗である。失敗のデフレ、あるいは失敗のコストの極小化と言ってもいい。その背景にはスタートアップ自体のコストの劇的な低下がある。サーバ代や開発期間が劇的に小さくなっている。90年代はそれらに億単位の金がかかったが、今やクラウドサーバやノンエンジニアの素人でもサービスが作れる。そららをつかってコストゼロからスタートして事業のスケールにある応じて漸増すればよい。

 

ここから得られる教訓は、イノベーションに取り組むものは失敗を量産すべきである、という命題である。失敗のコストが極小化しているということは、それを回避することによって生じる機会損失の方が相対的に大きくなったということと同義だからである。成功を追い求める者であるならば、失敗を避けるということはそもそも合理的な選択行動ではない。失敗のコストはありがたいことに極小化したのである。

 

過剰流動性イノベーション至上主義のマリアージュ

世の中に金が増えて、市場参加者が増えると、当たり前だが投資の収益性は下がる。すると期待収益が高いアセットクラスから、低い方へと水のように降りてくる。それがスタートアップの株式というアセットクラスの値段を釣り上げ、ユニコーンと呼ばれる時価総額1ビリオン米ドル以上の企業を世界中に数百社も生んだ理由である。

 

それを証明するかのごとく昨今のマーケットで同時に起きている減少がある「バリュー投資の死」と言われる減少である。普通の投資をディシプリンを効かせてやっていれば儲かった、という時代は残念ながら終わってしまったのである。

 

マネタリーベースを見ると、リーマンショック直後から2018年を比較すると4倍に跳ね上がっている。流動性、すなわち金の量に呼応して上がっているものは、あらゆる資産の価格である。

 

現代において株式市場が最も影響を受ける要因は実体経済とともに、金融政策すなわち金利やマネタリーベースである。世界はリーマンショック以降、異次元の金融政策を実施、大量の紙幣発行によって経済を支えてきた。これが、株式市場がその後現在までにおいて好調である大きな要因のひとつなのだが、同時にまたスタートアップ、ひいてはイノベーションのインフレの理由をマクロの過剰流動性に見出すことが論理的にだと言える証左である。

 

トップライン重視でボトムライン軽視、規模重視で効率軽視

過剰流動性イノベーション至上主義のカップリングにより、スタートアップ経営における新たなルールが形成された。第一のルールは、売上の重視、収益の軽視である。

 

イノベーション至上主義のスタートアップ投資価値基準は、グロース投資の次元を遥かに超えた、いわばハイパーグロース投資である。つまりは、利益ではなく売上、あるいは売上すらも通り越して、流通総額やユーザ数といった経営指標をその算定根拠とする。

 

第二のルールが規模重視で、効率軽視だ。イノベーションの青田買いが進むと、その産業におけるポール・ポジションという地位の希少価値が高まる。故にその奪取競争が早期化する。そのためには金に糸目はつけない。なぜなら金は過剰流動性によってそもそもコモディティ化しているからである。よって、使いさえすればポール・ポジションを取れると見るや、尋常ではない規模の資金が集まるし、その資金が尋常ではない使われ方をすることが投資家に許容される。

 

まだ続きます。

 

 

 

 

Googleの対価と効用、徳のデジタル化について

 

東大の渡辺努先生のセミナー「技術革新と経済停滞のパラドックス」が大変興味深かったので、言及されていたGDPとテクノロジーの部分について、考察してみたいと思います。

公益産業研究調査会 バックナンバー

 

 

効用は上がっているが、GDPは下がっている。

GDPをはじめとする統計は、価格データを使って基本的に作成されていますが、テクノロジーの発展により、価格がゼロのサービスが多く存在します。その代表的なものとしてWikipediaを挙げます。Wikiを例に考えると、Wikiによって人々は敢えて辞書を買わずともあらゆる情報を無償で得られるようになりました。そうすると、人々の効用は上がる一方でGDPは百科事典市場の売り上げ減少分下がることとなります。そういうことがこれからも起きると考えると、社会的効用とGDPのリンクは今後更に弱まるのではないかと想像できます。

 

また、無償サービスで忘れてはいけないのがGoogleです。Wikipediaと同様、ユーザは無償であらゆる情報を調べることができます。とはいえマネタイズの面で両者は異なります。Wikiはユーザの寄付で成立しているのに対し、Googleは広告主から広告料を貰うことで成立しています。

 

話を少し変えると、テレビが普及し始めたのは1950年頃からですが、テレビによって人々は無料でコンテンツを楽しむことができました。なぜ無料で番組を見られるかと言うと、CMによりコンテンツプロバイダーは利益を得ることができたからです。そう考えると、ユーザは「CMを見せられる」という対価を払う代わりに、コンテンツを楽しめるというバーターになっていると捉えることができます。

 

Googleはテレビのビジネスモデルの延長線上にあるのではないか、と考えることができます。しかし、ここである問題があります。それは、果たしてGoogleがもたらしている価値は、ユーザが支払う価値とバーターになっているのかというものです。

 

ある研究者によると、Google検索エンジンがもたらす満足度=効用と、検索エンジンを使う時にユーザが払っている対価は見合わないという研究成果があげられました。つまり、Googleに払っている対価は、検索エンジンから受け取っている満足度の対比でいえば極僅かになるということです。

 

これは、技術革新を起こしている企業は、実は技術革新の果実を十分に取れていないとも言えます。Googleは360億ドルの広告収入を得ているそうですが、それに対して、Google検索エンジンなどで生み出している効用は、だいたい1500億ドルくらいで、明らかに生み出している価値の方が大きいことになります。つまり、Google検索エンジンはユーザに計り知れない価値をもたらしていると捉えることができるわけです。とはいえ、個人的には個人情報の価値は今後どんどん上がっていくと思うので、そこのギャップは縮小するだろうと思っています。

 

GDPは確かに経済活動を図る指標として優れていますが、ある一面しか捉えることができないため、Wikiの例で挙げたような見方をすると不景気になっていると考えてしまいます。しかし、それは経済の片面しか見ていないことになります。前述したようにテクノロジーの進展により経済活動は高度化され、GDPにより実際の経済活動を捉えることは困難になっていくので、他の見方をする方が適切だという流れになるでしょう。

 

貨幣経済と非貨幣経済

では、テクノロジーが進展しているなかで、どのように経済活動を捉えると良いのか。そこで、渡辺先生は、貨幣経済と非貨幣経済に分けて考えています。お金を払って物を買う貨幣経済WikiGoogleのようにお金を伴わない非貨幣経済というように。とはいえ、非貨幣経済は昔からありました。家庭内の労働は非貨幣経済の典型です。これは貨幣を介在させずに、あるコミュニティの中で評価経済することによって成立しています。そうした面の経済活動も捉える必要があるということです。将来的には、貨幣経済は小さく、非貨幣経済は大きくなり、重なる部分がかなり増えるのではないかと予想します。

 

「徳」のデジタル化

経済活動は今後、どのようになるのでしょうか。私としては、これまで具現化されていなかった価値が、テクノロジーによってどんどん経済活動(not GDP)に表れてくると思います。例えば、先述した非貨幣経済の中での家庭(コミュニティ)労働、このような価値はコミュニティ外にも表出されるのではないかと思っています。他にも、道のごみを拾ったり、落し物を届けたりという貨幣経済的には意味をなさないものも、価値が計測・蓄積されるのではないかとも思っています。良いことをすると「徳のある行動」と言いますよね。今までは社会全体に認知されずらいものだったのが、どんどん仕組みにビルトインされるという想像もしています。それって徳がデジタルによって社会に実装されるみたいなもんじゃないの?って思うわけです。

 

中国では、アリババやテンセントなのが信用スコアという制度を作っていて、個人の職歴や行動データによって融資利率やサービスの利用に影響させています。これは一見、監視社会だと恐れるかもしれませんが、人々の評価をよりフェアにさせる効用があると見ています。例えば、昔は人の行動データが得られなかったので、学歴のようなデータのみで判断していたものが、他のデータを加味することによって、お金が無くて大学いけなかったけど信用スコアが高いから大丈夫だよね、みたいな頑張った人が報われる社会になります。勿論、国家による監視が進むという面も否定できませんが、テクノロジーの進展で見逃された価値が収集され、いわゆる「徳」がデジタル化される時代が来るのだろうと密かに考えています。

 

市場価値は、価値全体のほんの僅か

市場経済は価値全体のわずかな部分に過ぎないと思っています。今までは貨幣を通じてしか交換ができないから市場経済だけを見ればよかったのですが、SNSやその他サービスにより、貨幣価値以外の価値が認められるようになっています。そして、そのような信用価値は貨幣価値にも変換可能です。例えば圧倒的なフォロワー数はインフルエンサーとして、貨幣価値に変えることができます。敢えて言うと、貨幣の適用範囲が今まで狭すぎたのでしょう。貨幣価値以外の価値が今後、どんどん大きくなるでしょう。

 

とまあ、長くなりましたがまとめると、GDPでは経済活動全体を捉えることが難しくなっているので、全体を把握するためには経済的取引が発生していない箇所も見る必要があるということ、個人の行動に評価ポイントが付与されたりのような、あらゆる行動が可視化されるので、「お天道様がみている」のような徳がデジタル技術によって、世界は構築されるというお話です。

 

若干、ブログの主旨とは慣れていますが、このようにいろいろと考えることができて面白かったので、機会があれば皆さんも読むといいですよ。。。