悲しき社畜が経済的自由を目指すブログ

これは、悲しき社畜が経済的自由を目指す物語である。

【書評】「事業を創る人」の研究

  • 新規事業は担当に任せるだけではダメ。新規事業を任せるとは、配属を決めることではなく、「権限を与えず責任を負わせること」でもない。
  • 新規事業を任せるとは、「権限を付与し、新規事業を創るプロセスを支援し、結果に対する責任を共有する」ことである。
  • 会社都合の方が好業績者の割合が高いというデータがあるが、これはビジネスコンテストや社内移動希望申請という仕組みが意味を持たないということではなく、プラン採用後に資金や人員を動かせることを保証するメカニズム=仕組みが大事ということ。
  • 役員は事業や会社全体に対して俯瞰した視座を持っており、社内資源を動員しやすい立場であることから、経営による率先垂範型プロジェクトが最もうまくいく。
  • 既存事業での豊富なキャリアは、ないよりある方がいいが、既存事業の在籍年数が長くなりすぎると「過剰適応の罠」や「能動的惰性」によりネガティヴな効果もある。
  • 先行研究によると、アイデアが成功するには、そのアイデアの質よりも、そのアイデアに政治的な支援を集められるかどうかに関する見通しの方が重要である。つまりは、ビジネスアイデアよりも社内の巻き込みが大事である。
  • 新規事業においては、PDCAのようなお膳立てモデル(コーゼーション)ではなく、まずは実行してから決定要因の秩序を理解する思考法(エフェクチュエーション)が効果的である。
  • 上司側の意思決定の判断軸や担当への評価基準は、全て新規事業の特性に合わせて設定されるべきだが、明確な基準がない上司の場合はノープラン風見鶏上司になる可能性がある。
  • 新規事業を経験したことのない上司は、新規事業の特性を無視した管理型マネジメントに陥りがちである。つまりは、新規事業の立ち上げ時に、既存事業部門と同様の「必勝前提」で高い目標を設定し進捗管理をしだす。そうすると、どんなに優れた人材であっても新規事業はすぐに結果が出ないため、人材の疲弊を招くこととなる。
  • 新規事業は多産多死となりがちだが、経営者が多産多死型スタンスを持っていると事業の業績は低くなる。この結果が示唆することは、「やるからには成功させよう」という一意専心の覚悟が必要だということ。
  • 新規事業は誰も正解を知らない。だからこそ、経営者は評価する立場から現場に降りて、新規事業部門の人々と一緒に考えて議論を重ねていくことが、正解に近づく唯一の最良のアプローチである。
  • 新規事業担当者は、孤独になりがちなので社外の新規事業担当者とのつながりを作るべき。知の探索による外部資源の獲得、事業アイデアに対する客観的評価の獲得、境遇の相対化など様々な効果がある。
  • 組織の構造を変えることで、既存事業部門の論理で新規事業の方針が左右されてしまう問題を解決するアプローチが出島モデルであるが、出島モデルの課題は既存事業との交流機会が途絶えること。一方で近づきすぎることは軋轢を生むことから、新規事業部門は二律背反の関係を迫られている。
  • 新規事業は、出島モデルにして既存事業からは遮断しつつ、太い橋をかけて権力者を往来させて一定の接続は保つ、というバランス状態を志向するべき。
  • 既存事業の持つ人材や技術・顧客・販売チャネルなどの経営資源は共有できるように接続しておく仕組みを用意する。
  • 既存事業の事業マネジメントの方法は遮断する。事業や人を評価する基準は既存事業とは完全に分けて、新規事業に適したマネジメント手法を取り入れるべき。
  • 自社資源の活用こそが、成熟した企業の中で新規事業を生み出す最大のメリット。社内に活用できる資源があるからこそ、新規事業は成功する。逆に言えば、自社の資源を活用できなければ、企業内で新規事業を立ち上げるメリットはない。
  • 成果を上げた企業と成果が出なかった企業との間で最も大きな差が出ているのは「自社の強みの分析・他社研究」の有無。成果を上げた企業の多くが自社分析を行なっていた。強みがどこにあってどういう資源があるかを把握することが新規事業の成果に大きく影響する。